機能性ディスペプシア(FD)と胃カメラ検査 ― 本当に必要なのでしょうか?【令和7年度 胃カメラ実施状況】
2026.06.12

外来では、「胃もたれが続いているのですが、胃カメラは受けたほうがいいですか?」「機能性ディスペプシアと言われましたが、検査は必要ないのでしょうか?」というご相談をよく受けます。今回は、機能性ディスペプシア(Functional Dyspepsia:FD)と上部内視鏡検査(胃カメラ)の関係についてお話しします。機能性ディスペプシアは、胃の不快な症状が続いているにもかかわらず、胃カメラなどの検査で明らかな異常が見つからない状態を指します。
代表的な症状には、
- 食後の胃もたれ
- 少し食べただけで満腹になる
- みぞおちの痛み
- みぞおちの焼けるような感じ
- 吐き気
などがあります。以前は「検査で異常がないから気のせいではないか」と考えられることもありましたが、現在では胃や十二指腸の運動機能異常、知覚過敏、ストレス、自律神経の影響などが関与する病気として認識されています。
|胃カメラ検査は診断に必要か?
結論から言うと、機能性ディスペプシアが疑われる場合でも、胃カメラが必要になることがあります。なぜなら、胃もたれやみぞおちの痛みは、
- 胃炎
- 胃潰瘍
- 十二指腸潰瘍
- 逆流性食道炎
- 胃がん
などでも起こる症状だからです。
2025年度(令和7年度)、当院では「機能性ディスペプシアらしい症状」のため胃カメラを行った患者さまは230人いました。そのうち、29人で以下のような病気が見つかっています。
| ピロリ菌による胃炎 | 4人 |
|---|---|
| 治療を必要とする逆流性食道炎 | 19人 |
| 胃・十二指腸潰瘍 | 5人 |
| 食道がん | 1人 |
まずは他の病気が隠れていないか確認することが大切です。
|特に胃カメラをおすすめする方
次のような場合には、積極的に胃カメラを検討します。
- 中高年になって初めて症状が出た場合年齢とともに胃がんや消化管疾患のリスクは上昇します。これまで症状がなかった方が新たに胃の不調を感じるようになった場合は、一度検査を受けることをおすすめします。
- 体重減少がある場合意図しない体重減少は重要なサインです。食欲低下だけでなく、重大な病気が隠れている可能性もあります。
- 貧血や出血の兆候がある場合貧血を指摘された、黒い便が出る、吐血した、といった症状がある場合は早めの受診が必要です。
- 症状が長期間続いている場合市販薬を使用しても改善しない場合や、症状が繰り返し起こる場合には、原因を詳しく調べる価値があります。
|胃カメラで異常がなければ安心材料にも
胃カメラを受けて異常が見つからなければ、機能性ディスペプシアの診断に近づきます。
また、「胃がんではなかった」「潰瘍はなかった」という安心感が得られることで、症状への不安が軽減し、結果的に症状の改善につながることもあります。
|機能性ディスペプシアは治療できる病気です
機能性ディスペプシアは決して珍しい病気ではありません。
治療としては、
- 胃の動きを改善する薬(アコチミド、モサプリド、イトプリドなど)
- 胃酸分泌を抑える薬(プロトンポンプインヒビターなど)
- 漢方薬(六君子湯など)
- 生活習慣の改善
- ストレスへの対策
などを組み合わせて行います。また、ピロリ菌感染者では除菌療法により症状が改善する場合があり、優先して行います。適切な診断と治療によって、多くの方で症状の改善が期待できます。
|まとめ
機能性ディスペプシアは、検査で明らかな異常が見つからないにもかかわらず、胃もたれやみぞおちの痛みなどの症状が続く病気です。しかし、症状だけでは胃炎や胃潰瘍、胃がんなどとの区別が難しいため、必要に応じて胃カメラ検査を行うことが重要です。
「ただの胃もたれだろう」と我慢せず、症状が続く場合は一度消化器内科にご相談ください。早めの診断が安心と適切な治療につながります。
《令和7年度 胃カメラ(上部内視鏡検査)の実施状況》
| 令和7年度 | 657人 |
|---|---|
| 令和6年度 | 649人 |
| 令和5年度 | 555人 |
| 経口内視鏡(口からの胃カメラ) | 252人(38%) |
|---|---|
| 経鼻内視鏡(鼻からの胃カメラ) | 278人(42%) |
| 鎮静剤を使用した上部内視鏡(眠ってする胃カメラ) | 127人(19%) |
| 胃の痛み・胸やけなど症状の原因を調べるため | 234人(36%) |
|---|---|
| 前回の胃カメラで指摘された病変の経過観察のため | 107人(16%) |
| 健康診断(バリウムなど)で異常を指摘されたため | 57人(9%) |
| 仙台市胃がん内視鏡検診 | 210人(32%) |
| 早期胃がん | 1人 |
|---|---|
| 未治療のピロリ菌による胃炎 | 32人 |
| 食道がん | 1人 |
| 十二指腸腺腫 | 1人 |
| 治療を必要とする逆流性食道炎 | 29人 |
| 胃・十二指腸潰瘍 | 7人 |
| 胃粘膜下腫瘍 | 16人 |
| 食道胃静脈瘤 | 1人 |

院長
青森県三沢市出身
函館ラ・サール高校卒
近畿大学医学部卒
医学博士
日本内科学会認定 総合内科専門医
日本消化器病学会認定 消化器病専門医
日本内視鏡学会認定 内視鏡専門医
日本肝臓学会認定 肝臓専門医
日本医師会認定 産業医
日本肝癌研究会 会員
日本超音波学会 会員
難病指定医 消化器科
身体障害者福祉法第15条第1項による指定医(障害区分:肝臓の機能障害)
