突然の下血と左下腹部痛!虚血性腸炎:令和5年度の大腸内視鏡検査の実施状況
2024.07.16
虚血性腸炎とは、左側大腸(下行結腸・S状結腸)の動脈末梢が閉塞・狭窄し、大腸の粘膜に血液が巡らなくなり炎症をおこす病気です。突然の下血と左下腹部痛で発症します。
当院のような消化器内科・内視鏡を専門とするクリニックに下血を訴え受診する患者さまの中では比較的頻度の高い病気です。
内視鏡で虚血性腸炎と診断した患者数
令和5年度 | 7人 |
令和4年度 | 9人 |
令和3年度 | 1人 |
虚血性腸炎の原因と好発年齢
動脈硬化などによる血液の循環障害が原因と考えらえ、高血圧、糖尿病を有する50才以上の高齢者(やや女性に多い)に好発します。また、便秘や下剤使用による腸管内圧上昇も発病の誘因となるといわれています。長年、高齢者がなる病気と考えらえてきましたが、近年若年者の発症も増加しており便秘のある若い女性に多いようです。当院でも若年女性の虚血性腸炎を数例経験しています。
虚血性腸炎の症状と診断
症状は突然の腹痛(左側)、下血(鮮やかな赤い血液)、下痢です。大腸内視鏡検査では左側大腸(下行結腸・S状結腸)に粘膜のむくみと出血を認めます。経過や内視鏡所見が特徴的であり、消化器内科専門医であるならば診断には苦慮しないことが多いです。CT検査が行える施設では、左側大腸の腫れをCTで確認し診断する場合もあります。稀に、特殊な大腸癌、感染性腸炎、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎)でも、虚血性腸炎と似たような内視鏡やCTの所見を認めますので注意が必要です。
治療
多くの場合は腸管を安静にさせる食事指導のみで軽快します。症状が強い場合は絶食で腸管を安静に保つ必要があります。その場合は入院し点滴を行います。非常に稀ですが腸管が壊死したり狭窄(狭くなる)したりすることもあり慎重な経過観察が必要です。
《令和5年度 大腸内視鏡の実施状況》
・実施した数
令和5年度 | 178人 |
令和4年度 | 202人 |
令和3年度 | 184人 |
・実施した大腸内視鏡の詳細
全大腸内視鏡検査 | 100人(56%) |
鎮静剤を使用した(眠ってする)全大腸内視鏡検査 | 61人(34%) |
S状結腸内視鏡 * | 15人(9%) |
*肛門からS状結腸まで観察する内視鏡検査です。(全大腸内視鏡は肛門からさらに奥の盲腸まで観察します。)血便で来院された場合に前処置をせずに行います。血便の原因や緊急性の評価に役立ちます。
・主な検査の目的
血便の原因を調べるため | 30人(17%) |
腹痛、下痢、便秘などの症状の原因を調べるため | 39人(22%) |
前回の大腸カメラで指摘された病変の経過観察のため | 22人(12%) |
健康診断(便潜血反応など)で異常を指摘されたため | 74人(42%) |
・診断した大腸の病気で特筆すべきもの
進行大腸癌 | 1人 |
早期大腸癌 | 1人 |
大腸ポリープ | 72人 |
潰瘍性大腸炎 | 4人 |
虚血性腸炎 | 7人 |
神経内分泌腫瘍 | 1人 |
放射線腸炎 | 1人 |
・大腸ポリープの転帰
当院でポリープを治療切除 | 5人 |
高次医療機関にポリープの診断治療を依頼 ** | 9人 |
経過観察 | 58人 |
**連携紹介医療機関:仙台医療センター(3人)、東北医科薬科大学病院(3人)、仙台市立病院(2人)、仙台厚生病院(1人)
前述の通り、下血をきっかけに受診し病気の発見に至るケースは少なくありません。早期発見により適切な治療に結びつけられるので、長く続く便秘や腹部に違和感を感じた際には角田記念まつだ内科・消化器内科へご相談ください。
RSウイルス感染症は高齢者の重症化に注意!ワクチンによる予防が有効
2024.06.30
RSウイルスは感染すると4~5日の潜伏期間を経て発熱、鼻水、咳などの症状が数日続き、多くは軽症で治癒します。接触感染と飛沫感染で広まります。
乳幼児がかかる病気として広く知られていますが、実は高齢者も多く感染します。その場合は肺炎など重症化するケースも少なくありません。
|高齢者の重症化に注意
季節性の呼吸器感染症として知られているインフルエンザは例年700万人~1,000万人の患者が外来を受診していると推定されています。
そのうち60歳以上の高齢者の割合は2018~2019年シーズンで14.5%、2019~2020年シーズで9.1%でした。
RSウイルス感染症の場合は60歳以上の患者は年間70万人と推定されています。このうち入院は6.3万人、死亡は4,500人です。これはインフルエンザにも匹敵する患者数です。
インフルエンザと比べた場合の高齢者のRSウイルス感染症の特徴としては、死亡率は若干低いのですが、入院期間が長期間となる傾向があります。そのため、高齢者では日常生活を送るための動作能力が低下し、寝たきりになってしまうケースもあります。
このように例年インフルエンザと同様に猛威をふるうRSウイルス感染症ですが、高齢者ではどうして認知度が低いのでしょうか?
乳幼児ではRSウイルス感染症は迅速検査キットを用いて診断することができます。
しかし、高齢者の場合は小児と比べウイルスの排出量が少なく、迅速診断キットでは正確な診断ができません。よって、高齢者の場合は迅速検査自体も保険適応外となっています。
治療に関してもインフルエンザのような抗ウイルス薬はなく、症状を和らげる治療が中心となります。
このように、診断法・治療法がないことが、われわれ医療従事者も含め高齢者のRSウイルス感染症の認知度低下につながっていると推定されます。
|RSウイルス感染症はワクチンによる予防が有効
高齢者ではRSウイルスに対する診断・治療法がないことは先述した通りです。
よって、重症化の危険がある高齢者にとっては予防が非常に重要です。
2023年9月にRSウイルスに対するワクチン(アレックスビー:グラクソス・ミスクライン社)が承認されました。60歳以上が対象です。
特に基礎疾患(慢性閉塞性肺疾患・気管支喘息といった呼吸器の病気、糖尿病、慢性心不全、進行した肝臓や腎臓の病気)のある高齢者への有効性が期待されています。
RSウイルスワクチンとインフルエンザワクチンの比較
RSウイルスワクチン (アレックスビー) |
インフルエンザワクチン | |
接種回数 | 1回 | 1回または2回 |
持続効果 | 現時点でデータなし | 1シーズン |
注射方法 | 筋肉注射 | 皮下注射 |
対象年齢 | 60歳以上 | 全年齢(生後6か月以上) |
接種時の痛み | 10%以上 | 頻度不明であるがあり |
副反応 | 頭痛、筋肉痛、関節痛(10%以上)、発熱(1~10%未満) | 特に問題となるものはなし |
有効性 | 60歳以上では82.58%、基礎疾患のある患者では94.61%の有効性を認めた。 | 高齢者(65歳以上)では発病阻止効果が34~55%、死亡阻止効果が82%で有効であった。 |
価格 | 27,000円(税込) | 3,500円(税込) |
仙台市若林区六丁の目駅前の角田記念まつだクリニック内科・消化器内科でも、RSウイルスワクチン接種を開始しました。接種を希望される方はご相談ください。
生鮮魚介類を食べたあとの突然の腹痛!アニサキス症:令和5年度 胃カメラ(上部内視鏡検査)の実施状況
2024.06.13
アニサキスは、サバ、アジ、イワシ、イカ、サンマなどに寄生する20mm弱の白い糸状の寄生虫です。人の体内に侵入したとき、アニサキスは胃や腸の壁に食いつき、腹痛・嘔吐といったアニサキス症を引き起こします。
令和5年度、当院でアニサキス症と診断した患者さまは4人でした。冷蔵技術・流通システムの進歩により新鮮な魚介類を手軽に食べられるようになりました。そのためアニサキス症の患者さまは毎年のように受診されます。魚介類を食べたあとに胃痛、吐き気が現れた場合は、できるだけ早くご相談ください。
アニサキスの症状
アニサキスが、口から体内に入り、胃の壁に食いつき突き刺さると胃アニサキス症を発症します。アニサキスが寄生している魚介類を摂取3~4時間後に激しい胃痛・嘔吐が現れます。アニサキスが胃を通過し腸に食いつき突き刺さった場合は腸アニサキス症を発症します。症状の出現は胃アニサキス症より遅く摂取10時間から数日後に下腹部痛や吐き気をきたします。稀ではありますが腸閉塞や腸穿孔をきたし入院が必要となる場合もあります。
胃アニサキス症の検査・治療
問診により胃アニサキ症が疑われる場合は、胃カメラ検査を行います。アニサキス虫体を認めた場合は内視鏡を使って除去することもできます。虫体除去により症状は軽快します。令和5年度、当院で診断した4人の胃アニサキス症の患者さまも、全て当院で内視鏡を用いてアニサキスを摘出しています。
アニサキスの予防
アニサキスは60℃以上1分以上の加熱、マイナス20℃以下24時間以上の冷凍で死んでしまいます。アニサキスは魚介類の内臓に寄生し、捕獲されると筋肉に移動します。魚介類を調理するとき新鮮なうちに内臓を取り出しておくことでアニサキス症のリスクを下げることができます。アニサキスは20mm弱の白い糸状の虫体です。調理するときや食べる直前によく観察し、アニサキスの有無を確認することも大切です。
《令和5年度 胃カメラ(上部内視鏡検査)の実施状況》
・実施した数
令和5年度 | 550人 |
令和4年度 | 518人 |
令和3年度 | 528人 |
・検査の種類
経口内視鏡(口からの胃カメラ) | 263人(48%) |
経鼻内視鏡(鼻からの胃カメラ) | 204人(37%) |
鎮静剤を使用した上部内視鏡(眠ってする胃カメラ) | 83人(5%) |
・主な検査の目的
胃の痛み・胸やけなど症状の原因を調べるため | 168人(31%) |
前回の胃カメラで指摘された病変の経過観察のため | 116人(21%) |
健康診断(バリウムなど)で異常を指摘されたため | 71人(13%) |
仙台市胃がん内視鏡検診 | 166人(30%) |
・診断した胃の病気で特筆すべきもの
未治療のピロリ菌による胃炎 | 50人 |
治療を必要とする逆流性食道炎 | 7人 |
胃・十二指腸潰瘍 | 10人 |
胃粘膜下腫瘍 | 6人 |
食道胃静脈瘤 | 2人 |
アニサキス症 | 4人 |
例年よりも梅雨入りが遅く気温の高い日が続く見込みです。食品の管理には十分注意し、胃痛・吐き気など異変を感じた際には、できるだけ早く若林区六丁の目駅前の角田記念まつだクリニック内科・消化器内科までご相談ください。
『糖尿病』を放置していませんか?
2024.03.05
厚生労働省の2019年「国民健康・栄養調査」によると、我が国で「糖尿病が強く疑われる人」は約1,000万人と推定されています。
そして、その4分の1は未治療で放置されていると言われており、糖尿病患者様が安心して負担なく治療できる環境整備が急務です。
仙台市若林区六丁の目にある角田記念まつだクリニック内科・消化器内科では、これまで「かかりつけ医」「総合内科専門医」として、糖尿病の患者様が通院できる環境を整備してきました。
現在、当院で可能な糖尿病の検査・治療は下記の通りです。大方の糖尿病検査・治療は可能と考えております。
|当院で可能な主な糖尿病の検査
- 血糖値、HbA1C (ヘモグロビン・エー・ワン・シー)
糖尿病の程度の指標です。院内の検査機器を使用し5分程度で結果が分かります。 - 尿中アルブミン:
糖尿病の合併症の一つである糖尿病性腎症の早期発見に役立ちます。 - 血中インスリン、尿中/血中Cペプチド、75gOGTT:
糖尿病の病態把握、治療方針の決定に役立ちます。 - 自己血糖測定:
簡易自己血糖測定器を用いて自分で血糖値を測定します。 - 間欠スキャン式持続血糖測定(商品名:フリースタイルリブレ):
センサーを皮膚に貼り付けて24時間の血糖値を測定します。
|当院で可能な注射薬による糖尿病治療
- インスリン療法(商品名:ライゾデグ、ノボラピットなど):
血糖を下げるホルモンであるインスリンを自己注射します。 - BOT療法(商品名:トレシーバなど):
基礎インスリン補充目的の持続効果型インスリンの注射と経口血糖降下薬を併用する治療です。 - GLP-1受容体作動薬(商品名:トルリシティ、オゼンピックなど):
膵臓からのインスリン分泌を促進する作用がある小腸から分泌されるホルモン(GLP-1)を、より作用しやすいように構造を変えた製剤です。 - GIP/GLP-1受容体作動薬(商品名:マンジャロ):
上述のGLP-1にGIPという小腸から分泌されるホルモンを加えた製剤です。GIPには食欲を抑える効果があります。
|当院で可能な飲み薬による糖尿病治療
- DDP-4阻害薬(商品名:ジャヌビアなど):
膵臓からのインスリン分泌を促進する作用がある小腸から分泌されるホルモン(GLP-1)が分解されるのを防ぎ、血糖値を下げます。 - GLP-1作動薬(商品名:リベルサス):
上述の注射薬の飲み薬です。 - SGLT2阻害薬(商品名:フォシーガ、ジャディアンスなど):
腎臓において、糖の再吸収を抑えることにより、糖を尿と一緒に外に出し、血糖値を下げます。 - スルホニル尿素(SU)薬(商品名:アマリール、オイグルコンなど):
インスリン分泌を司る膵臓に働きかけ、インスリン分泌を促進させ血糖値を下げます。 - 即効型インスリン分泌促進薬(商品名:シュアポストなど):
スルホニル尿素薬と同様に膵臓に働きかけ、インスリン分泌を促進させ血糖値を下げます。
SU薬と比較すると吸収・分解が非常に速いことが特徴で、主に食後の高血糖を下げる目的で服用します。 - ビグアナイド(BG)薬(商品名:メトグルコ、ツイミーグなど):
肝臓で糖が作られるのを抑えたり、筋肉での糖利用を高めたりすることで、血糖値を下げます。 - αグルコシダーゼ阻害薬(商品名:ベイスンなど):
腸管において、食べ物に含まれるブドウ糖の吸収を抑えて、食後の血糖値が高くなるのを防ぎます。 - チアゾリジン薬(商品名:アクトス):
脂肪や筋肉に対してインスリンの働きを高めることで、ブドウ糖の利用を促進し、血糖値を下げます。
|食事指導
医師や看護師が食品交換表や食事記録表を用いて行っています。
厳重な食事管理を必要とする場合や患者様から希望があった場合は、管理栄養士のいる専門病院に依頼しています。
|糖尿病の治療・検査の最近の話題
- GLP-1作動薬は、膵臓からインスリンを分泌させるだけでなく、体重減量や食欲低下の効果もあり糖尿病治療薬として非常に期待された薬でしたが、これまで注射薬しかありませんでした。
しかしついに内服薬が開発され、2021年から「リベルサス」が使用できるようになりました。 - 2022年にGIP/GLP-1受容体作動薬「マンジャロ」も使用できるようになりました。
GIPには、血糖を上昇させるホルモン(グルカゴン)を分泌させたり、脂肪にブドウ糖をため込んだり、糖尿病治療には不利な効果がありますが、強い食欲を抑える効果もあるため、実際にはGLP-1受容体作動薬を超える効果が期待されています。 - 長らく糖尿病治療の基本薬とされていたビグアナイド薬に2022年からはツイミーグが加わりました。従来のものよりも安全と効果の面で期待されています。
- 2022年から間欠スキャン式持続血糖測定が保険収載されました。
これまでは皮膚に針を刺して少量の血液を出し自己血糖値測定をしていましたが、間欠スキャン式持続血糖測定では皮膚にセンサーを張り付けて血糖値を測定します。
痛みが少なく、24時間の血糖値が測定できます。
このように、角田記念まつだクリニック内科・消化器内科では、少しでも糖尿病患者様の治療を負担なく続けられるよう努めております。
治療抵抗性の患者様、合併症を有する患者様に関しては、「かかりつけ医から糖尿病専門医・専門医療機関紹介基準」「かかりつけ医から腎臓専門医・専門医療機関紹介基準」に準じて、専門医・専門医療機関と連携をとりながら治療を行っています。
【PDF】かかりつけ医から糖尿病専門医・専門医療機関紹介基準
(作成:日本糖尿病学会 監修:日本医師会)
【PDF】かかりつけ医から腎臓専門医・専門医療機関紹介基準
(作成:日本腎臓学会 監修:日本医師会)
糖尿病の治療は継続が大切です。そのためには、まずは通院しやすい医療機関に相談することをお勧めします。
健診で「血糖値」「HbA1C」「尿糖」など「糖尿病」を疑う所見を指摘された場合は、遠慮なくご相談ください。
【2024年春】花粉飛散予想
2024.02.16
仙台市内における2024年春のスギ花粉の飛散開始は、例年並みの2月下旬と予想されています。
飛散量は例年(過去10年)と比べるとやや多い見込みです。花粉症の方は万全の対策を行ってください。
花粉症に対しては下記のような対策が有効です。
- マスク、眼鏡、帽子を着用する
- 表面がすべすべした素材のコートを着用する
- 帰宅時に衣服や髪をよく払ってから入室する
- 入室後、すぐにうがい、手洗い、洗顔をする
- 窓、戸をなるべく閉めておくようにし、換気時には窓を小さく開け、短時間にとどめる
- 洗濯物の外干しは避け、室内干しや乾燥機を使用する
- 特に窓際を念入りに、こまめに掃除をするようにする
- 空気清浄器を使用する
- ニュースなどで花粉の飛散状況をチェックし、飛散の多いときには念入りに対策したり、外出を控える
仙台市若林区六丁の目にある角田記念まつだクリニック内科・消化器内科では、花粉症に対しては、抗アレルギー薬(内服薬・点眼薬・点鼻薬)の処方を行っています。
これらの抗アレルギー薬は即効性に欠けるため、花粉飛散開始の1~2週間前からの服用が必要といわれています。
例年、花粉症の症状にお悩みの患者様は早めにご相談ください。
女性の「貧血」の原因と受診する科
2023.12.04
貧血とは血液の赤血球に含まれるヘモグロビンという物質が少なくなった状態です。
ヘモグロビンは血流に乗って酸素を身体全体に運ぶ働きをしています。よって、貧血では酸素の供給が低下して、疲れやすい・息切れ・めまい・動悸といった症状が出ます。
また、女性の場合は貧血の状態に慣れてしまい自覚症状がなく、健康診断で初めて指摘されることもあります。
このように女性にとって貧血とは健康診断で最も多く認める異常の一つですが、症状がなくても放置してはいけません。そこには重大な病気が潜んでいるかもしれません。
それでは、貧血の場合はどの診療科を受診するのがよいのでしょうか?やはり内科でしょうか?
|貧血の原因について
貧血には色々な種類がありますが、女性の貧血の90%以上はヘモグロビンの材料となる体内の鉄が不足しておこる「鉄欠乏性貧血」です。
鉄欠乏性貧血の原因としては、月経の量が多すぎること(過多月経)が最も多いです。
比較的頻度が多く生命に影響を与える可能性がある原因としては、胃や大腸からの出血(消化管出血)や月経時以外の女性器からの出血(不正性器出血)です。これらの症状がある場合は悪性のがんが潜んでいる可能性があり注意が必要です。
貧血には腎臓や血液の病気によるものもありますがその頻度はあまり多くありません。
鉄欠乏性貧血の原因
出血による鉄の喪失 |
|
鉄の吸収不良 | 胃炎による胃粘膜の異常や胃切除などによる鉄の吸収不良 (鉄が体に吸収されるには胃酸が必要です) |
鉄摂取量の不足 | 偏食やダイエットで食事からの摂取量が不足 |
鉄の需要の増加 | 妊娠や授乳など |
|女性の「貧血」はまずは婦人科または消化器内科に相談を!
女性の貧血で過多月経や不正性出血がある場合は婦人科へ相談するのをおすすめします。
血便・腹痛・便秘といった胃腸の症状を伴う場合、閉経した女性、胃がんや大腸がん検診を受けていない方は消化器内科に相談するのがよいと考えます。
これらに該当しない場合は一般内科でもよいでしょう。
消化器内科医は貧血の相談を受けることが多い診療科です。よって、当院も貧血の患者さまが頻繁に受診されます。
まずは、“総合内科専門医”として貧血が婦人科疾患・消化器疾患・血液疾患・腎疾患・その他の疾患のいずれかが原因となっているか調べます。消化器疾患が原因として疑われる場合は“消化器内科専門医”“消化器内視鏡専門医”として、胃や大腸に貧血の原因となる病気がないか調べます。
婦人科疾患が疑われる場合は併設している“ちえこ・ゆきかレディースクリニック”の女性医師と連携をとりながら診療を行っています。
健康診断で「貧血」を指摘された際は遠慮なく仙台市若林区六丁の目駅前の角田記念まつだクリニック内科・消化器内科までご相談ください。
糖尿病の診断について(血糖値とHbA1Cについて)
2023.10.23
皆さん今年度の健康診断の結果はいかがでしたか?
仙台市若林区六丁の目にある角田記念まつだクリニック内科・消化器内科では、短時間かつ少量の血液で糖尿病の診断できる検査装置を導入しています。
今回は糖尿病の診断に関して少し触れたいと思います。
そもそも糖尿病とはインスリン(膵臓から分泌される血糖値を下げるホルモン)の作用不足によって、血糖値の高い状態が続く病気です。高い血糖は血管を傷つけ、さまざまな糖尿病合併症を引き起こします。よって、血糖値を見ることは糖尿病の診断には非常に重要です。しかし、1回だけの血糖値では糖尿病の診断をすることはできません。「去年の健康診断は血糖値160で糖尿病と言われたけど、今年は120だった。何もしてないのに良くなったよ。」とお話しになる患者様がいます。これは、本当に良くなったのでしょうか?健康な人でも血糖値は食事・運動・ストレスなどの影響を受け70mg/dl〜140mg/dlぐらいの幅で変化します。糖尿病の患者様ではこの上昇の幅はより大きくなります。1回の血糖値のみで糖尿病の診断ができないのはこのためです。これを補うためにHbA1C(ヘモグロビンA1C)など過去にさかのぼって長期の血糖値の状態を把握する検査と照らし合わせて、糖尿病の診断を行います。
日本糖尿病学会の糖尿病診断では
- 血糖値(空腹時≧126mg/dl、75gOGTT2時間≧200mg/dl、随時≧200mg/dlのいずれか)
- HbA1C≧6.5%
を糖尿病型としています。
血糖値とHbA1Cが共に糖尿病型であるとき糖尿病と診断します。血糖値・HbA1Cのどちらか一方のみが糖尿病型の場合は再検査します。再検査で血糖値が糖尿病型の時は糖尿病と診断できます。最初の検査で血糖のみが糖尿病型、再検査でHbA1Cのみが糖尿病型の場合も糖尿病と診断できます。
上記のOGTTとはブドウ糖負荷試験のことです。前日の夜から絶食とし、朝にクリニックに来院していただき、75gブドウ糖を水に溶かしたもの(トレーランGというジュースのようなものを使用するのが一般的)を飲み、30分、60分、120分と採血し血糖値の推移を調べます。いわゆる隠れ糖尿病の診断に役立ちます。また、糖尿病の診断に至らない患者様でも、60分の血糖値が180mg/dl以上の場合は、将来糖尿病を発症する可能性が高いと言われ、慎重な経過観察を必要とします。
日本糖尿病学会では以下のような患者様にこの検査をすすめています。
1.強く推奨される場合(現在の糖尿病の疑いが否定できないグループ)
- 空腹時血糖値 110〜125mg/dlのもの
- 随時血糖値 140〜199mg/dlのもの
- HbA1Cが6.0〜6.4%のもの
2.行うことが望ましい(将来糖尿病を発症する可能性が高いグループ、高血圧、脂質異常症、肥満など動脈硬化のリスクをもつものは、特に施行が望ましい)
- 空腹時血糖値が100〜109mg/dl
- HbA1Cが5.6〜5.9%もの
- 上記を満たさなくても、濃厚な糖尿病の家族歴や肥満が存在するもの
糖尿病は自覚症状に乏しく、健康診断などでの早期発見が大切です。今一度、ご自身の今年度の健康診断の結果をご確認ください。
院内でピロリ菌の便中抗原検査ができるようになりました
2023.07.04
|ピロリ菌とは?
ピロリ菌は胃粘膜に生息する細菌で、胃がんの最大の原因です。
|ピロリ菌の検査方法
感染診断にはいくつかの方法がありますが、その中で尿素呼気試験は最も精度が高いとされています。
仙台の角田記念まつだクリニック内科・消化器内科では、2020年に尿素呼気試験の検査機器を導入し、短時間で感染診断を行うことができるようになりました。これにより、速やかにピロリ菌の除菌療法を開始することが可能となり、患者様の通院負担軽減に大きく貢献しています。
しかしながら、ごく稀にではありますが、内視鏡でピロリ菌感染を強く疑っても、尿素呼気試験で診断できない場合があります。
抗菌薬や胃薬などの服用、呼気の採取時に息止めが上手にできなかったことなどは、尿素呼気試験の偽陰性(実際は感染しているのに検査で陰性と判定されてしまうこと)の原因として知られています。このような場合は他の検査を行い、総合的にピロリ菌の感染診断を行います。
|精度が高く負担も少ないピロリ菌検査「便中抗原測定法」
当院では、便の中にピロリ菌の痕跡がないか調べる便中抗原測定法という検査を行っています。
方法は簡単で、専用容器で便を採取し、診断キットを用い10分程度で判定できます。
採便が必要であるという欠点はありますが、体への負担はなく、精度も近年はめざましく向上し、尿素呼気試験と比較しても遜色はありません。ピロリ菌治療後の効果判定にも使用できます。
これまで当院ではこの検査は外部の検査機関に委託していたため、診断まで数日を要していましたが、この度院内で実施可能となりました。これにより患者様のさらなる負担の軽減が期待できます。
仙台でピロリ菌の検査治療をお考えの方は、ぜひお気軽に若林区六丁の目駅前の角田記念まつだクリニック内科・消化器内科までご相談ください。
令和4年度 当院における上部内視検査(胃カメラ)の実施状況
2023.07.04
仙台の角田記念まつだクリニック内科・消化器内科で実施した、昨年度の胃カメラの実施状況に関してご報告します。
当院で胃カメラを受けられる患者様の参考になれば幸いです。
・実施した人数
令和4年度 | 518人 |
令和3年度 | 528人 |
令和2年度 | 555人 |
・検査の種類
経口内視鏡(口からの胃カメラ) | 253(48%) |
経鼻内視鏡(鼻からの胃カメラ) | 193人(37%) |
鎮静剤を使用した上部内視鏡(眠ってする胃カメラ) | 72人(14%) |
・主な検査の目的
胃の痛み・胸やけなど症状の原因を調べるため | 173人(33%) |
前回の胃カメラで指摘された病変の経過観察のため | 114人(22%) |
健康診断(バリウムなど)で異常を指摘されたため | 58人(11%) |
仙台市胃がん内視鏡検診 | 148人(29%) |
・診断した胃の病気で特筆すべきもの
未治療のピロリ菌による胃炎 | 50人 |
治療を必要とする逆流性食道炎 | 36人 |
胃・十二指腸潰瘍 | 9人 |
胃粘膜下腫瘍 | 16人 |
食道胃静脈瘤 | 2人 |
アニサキス症 | 1人 |
≪総括≫
新型コロナウィルス感染拡大以降、内視鏡では厳重な感染対策の実施が必要となりました。
当院でも従来行っていた対策に加え、ガイドラインに準じて検温、換気、ガウン・フェイスシールド着用など、これまでにない対策を開始しました。
令和4年度は弱毒のオミクロン株が流行の主体となり、ワクチン接種率向上もあいまって、様々な状況で規制緩和が行われました。しかしながら、内視鏡診療の現場では依然として感染リスクを念頭におきながら診療を続けています。
医療のなかで内視鏡はコロナ流行以前から厳重な感染対策が要求される部門です。
近年、当院で感染対策として行ってきたことの一つは、内視鏡機材のディスポーザブル(使い捨て)への変更です。
以前は多くの機材を消毒滅菌し再利用していましたが、近年はディスポーザブル製品も発売されています。ディスポーザブルはコスト面では不利ですが(患者さまの検査費用には影響ありませんのでご安心ください)、感染予防には非常に有効です。
昨年度はマウスピース(胃カメラを嚙まないように口にくわえる器具)をディスポーザブルに変更しました。最も徹底した消毒滅菌を必要とする処置具の生検鉗子(癌が疑われるときに診断のため胃の粘膜を採取する器具)は、2019年にディスポーザブルに変更しています。これらの対策は当院の内視鏡の感染予防に大きく寄与すると考えています。
仙台市若林区六丁の目駅前の角田記念まつだクリニック内科・消化器内科では、患者様が安全に内視鏡を受けられるよう、常に検証を行い環境整備しています。
過敏性腸症候群の診断に大腸内視鏡検査(大腸カメラ検査)は必要か?
2023.06.15
過敏性腸症候群とは、腹痛と便秘や下痢などの便通異常が慢性に続いたり、繰り返したりする病気です。
日本人の約10~15%が罹患しているといわれ、われわれのような消化器内視鏡専門医のいる消化器内科専門クリニックを受診することが多い病気の一つです。ストレス・腸内細菌・脳内ホルモン・体内ホルモン・遺伝などが発症に関わっているといわれています。
良性疾患ではありますが、日常生活の満足度に影響を与えるため適切な治療が必要となります。また、過敏性腸症候群の症状を訴える患者さまの中には、大腸癌・炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)など生命に影響を与える重篤な病気もあるため、診断には慎重を要します。
|過敏性腸症候群の診断
過敏性腸症候群の診断には国際診断基準のローマⅣ基準が用いられます。
【過敏性腸症候群の診断基準】
- 腹痛が直近3か月の1週間につき少なくとも1日以上を占め、
- 下記の2項目以上の特徴を示す
①排便に関連する
②排便頻度の変化に関連する
③便形状(外観)の変化に関連する
【過敏性腸症候群の分類】
過敏性腸症候群は中心となる症状で以下のように分類され、それぞれに合った治療を行います。
- 便秘型:硬便または兎糞状便が25%以上あり、軟便(泥状便)または水様便が25%未満のもの
- 下痢型:軟便(泥状便)または水様便が25%以上あり、硬便または兎糞状便が25%未満のもの
- 混合型:硬便または兎糞状便が25%以上あり、軟便(泥状便)または水様便も25%以上のもの
- 分類不能型:性状異常の基準がいずれも満たさないもの
ローマⅣ基準は検査を行わず症状のみで診断できるため、過敏性腸症候群の患者を絞り込むのに有用とされています。
しかし、本邦でローマⅢ基準(ローマⅣ基準の前のバージョン)に合致した患者さまに大腸内視鏡検査(大腸カメラ検査)を行ったところ、10.3%に大腸癌を含め何らかの異常所見を認めたと報告されています。過敏性腸症候群の診断で最も重要な大腸癌などの除外にはローマ基準のみでは不十分であることが分かります。
よって、過敏性腸症候群の診断においては、大腸癌や炎症性腸疾患などの可能性を疑うアラームサイン(警告兆候・症状)の有無を重要視します。本邦の学会ガイドラインでは、①発熱②関節痛③血便④6か月以内の予期せぬ3kg以上の体重減少⑤異常な身体所見(腹部腫瘤の触知・腹部の波動・直腸診による腫瘤触知・血液付着)をアラームサインとしています。これらのアラームサインが無い場合はローマ基準の診断精度は約98%であったとの報告も一部ありますが、やはり100%の完璧なものではありません。
|過敏性腸症候群の診断に大腸内視鏡検査(大腸カメラ検査)は必要か?
過敏性腸症候群と診断できる特徴的な大腸内視鏡所見は現時点では分かっていません。
それでは何故、腹痛や便通異常など過敏性腸症候群を疑う症状を認めた場合、われわれ消化器内視鏡専門医は患者さまに大腸内視鏡検査(大腸カメラ検査)を奨めるのでしょうか?
それは大腸癌や炎症性腸疾患など生命に影響を与える病気を完全に否定するためです。
本邦のガイドラインでは、先述のアラームサイン①~⑤があった場合、貧血・便潜血・低蛋白・炎症反応陽性といった検査の異常があった場合に大腸内視鏡検査(大腸カメラ検査)を推奨しています。
大腸癌リスクの高い50歳以上の発症、過去に大腸癌や炎症性腸疾患を罹患した患者さま、家族にこのような病気の人がいる場合も危険因子を有するとされ、大腸内視鏡を推奨しています。
以上よりガイドライン上は、50歳未満の発症で、アラームサインや採血などの検査異常がなく、危険因子もなくて、ローマⅣ基準を満たす場合は大腸内視鏡検査(大腸カメラ検査)を実施せずに過敏性腸症候群と診断できます。
確実に除外しなければいけないものが、生命に影響を与える病気であるため、大腸内視鏡を行わずに過敏性腸症候群と診断するにはいくつものチェックポイントをクリアしなければいけません。
また、本邦のガイドラインでは患者さまが検査を希望した場合も大腸内視鏡検査(大腸カメラ検査)を推奨しています。大腸内視鏡検査(大腸カメラ検査)を実施しないで過敏性腸症候群を診断することの難しさを補完するものです。
例えば50歳未満の大腸癌が全く存在しない訳ではありません。われわれ消化器内視鏡専門医は時にこの年代の大腸癌に遭遇します(本邦統計罹患率 35歳~49歳 11.9~38人/人口10万人対)。患者さまの「何かおかしい」「大腸癌が心配だ」という気持ちに対しては真摯に向き合わなければいけません。
良性疾患の過敏性腸症候群を疑う症状で大腸内視鏡検査(大腸カメラ検査)を行う最大のメリットは、大腸癌や炎症性腸疾患など生命を脅かす病気は存在しないと確実に保証できることです。
これは必ず患者さまが日々の生活を送る上で大きな「安心」になります。
近年の大腸内視鏡診断装置の進歩は目覚ましいものがありますが、未だ大腸内視鏡検査(大腸カメラ検査)は決して楽な検査ではないと思います。しかし、われわれ消化器内視鏡専門医は「苦痛の少ない」「安全で」「正確な」大腸内視鏡検査(大腸カメラ検査)を行えるように常に研鑽を積んでいます。
便秘、下痢、腹痛、血便など気になる症状が続く場合は心配なさらずに是非ご相談ください。