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突然の下血と左下腹部痛!虚血性腸炎:令和5年度の大腸内視鏡検査の実施状況
2024.07.16

虚血性腸炎のイメージ

虚血性腸炎とは、左側大腸(下行結腸・S状結腸)の動脈末梢が閉塞・狭窄し、大腸の粘膜に血液が巡らなくなり炎症をおこす病気です。突然の下血と左下腹部痛で発症します。

当院のような消化器内科・内視鏡を専門とするクリニックに下血を訴え受診する患者さまの中では比較的頻度の高い病気です。

内視鏡で虚血性腸炎と診断した患者数

令和5年度 7人
令和4年度 9人
令和3年度 1人

虚血性腸炎の原因と好発年齢

動脈硬化などによる血液の循環障害が原因と考えらえ、高血圧、糖尿病を有する50才以上の高齢者(やや女性に多い)に好発します。また、便秘や下剤使用による腸管内圧上昇も発病の誘因となるといわれています。長年、高齢者がなる病気と考えらえてきましたが、近年若年者の発症も増加しており便秘のある若い女性に多いようです。当院でも若年女性の虚血性腸炎を数例経験しています。

虚血性腸炎の症状と診断

症状は突然の腹痛(左側)、下血(鮮やかな赤い血液)、下痢です。大腸内視鏡検査では左側大腸(下行結腸・S状結腸)に粘膜のむくみと出血を認めます。経過や内視鏡所見が特徴的であり、消化器内科専門医であるならば診断には苦慮しないことが多いです。CT検査が行える施設では、左側大腸の腫れをCTで確認し診断する場合もあります。稀に、特殊な大腸癌、感染性腸炎、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎)でも、虚血性腸炎と似たような内視鏡やCTの所見を認めますので注意が必要です。

治療

多くの場合は腸管を安静にさせる食事指導のみで軽快します。症状が強い場合は絶食で腸管を安静に保つ必要があります。その場合は入院し点滴を行います。非常に稀ですが腸管が壊死したり狭窄(狭くなる)したりすることもあり慎重な経過観察が必要です。

《令和5年度 大腸内視鏡の実施状況》

・実施した数

令和5年度 178人
令和4年度 202人
令和3年度 184人

 

・実施した大腸内視鏡の詳細

全大腸内視鏡検査 100人(56%)
鎮静剤を使用した(眠ってする)全大腸内視鏡検査 61人(34%)
S状結腸内視鏡 * 15人(9%)

*肛門からS状結腸まで観察する内視鏡検査です。(全大腸内視鏡は肛門からさらに奥の盲腸まで観察します。)血便で来院された場合に前処置をせずに行います。血便の原因や緊急性の評価に役立ちます。
 

・主な検査の目的

血便の原因を調べるため 30人(17%)
腹痛、下痢、便秘などの症状の原因を調べるため 39人(22%)
前回の大腸カメラで指摘された病変の経過観察のため 22人(12%)
健康診断(便潜血反応など)で異常を指摘されたため 74人(42%)

 

・診断した大腸の病気で特筆すべきもの

進行大腸癌 1人
早期大腸癌 1人
大腸ポリープ 72人
潰瘍性大腸炎 4人
虚血性腸炎 7人
神経内分泌腫瘍 1人
放射線腸炎 1人

 

・大腸ポリープの転帰

当院でポリープを治療切除 5人
高次医療機関にポリープの診断治療を依頼 ** 9人
経過観察 58人

**連携紹介医療機関:仙台医療センター(3人)、東北医科薬科大学病院(3人)、仙台市立病院(2人)、仙台厚生病院(1人)

前述の通り、下血をきっかけに受診し病気の発見に至るケースは少なくありません。早期発見により適切な治療に結びつけられるので、長く続く便秘や腹部に違和感を感じた際には角田記念まつだ内科・消化器内科へご相談ください。