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みぞおちの痛みを放置しない!胃潰瘍、十二指腸潰瘍:令和6年度 胃カメラ(上部内視鏡)の実施状況
2025.05.22

胃潰瘍、十二指腸潰瘍で腹痛を訴える男性

潰瘍とは胃や十二指腸の壁がただれて傷つき、深い層にまで達した状態です。胃酸の攻撃、鎮痛剤(痛み止め)、ストレス、ピロリ菌が原因となり発症します。
当院では昨年度胃カメラで7人の胃潰瘍・十二指腸潰瘍の患者さまを診断し治療を行いました。今回は胃潰瘍・十二指腸潰瘍に関して説明したいと思います。

|胃潰瘍・十二指腸潰瘍の症状は?

みぞおちの痛み、吐き気、食欲不振、吐血、タール便(黒い便)などが挙げられます。胃潰瘍の10%程度は自覚症状がなく、健康診断の胃カメラやバリウム検査で偶然見つかることもあります。また、血液検査で貧血を認め、その原因を調べるために胃カメラを行い発見されることもあります。

|胃潰瘍・十二指腸潰瘍を放置するとどうなるか?

治療が遅れるとただれが壁の最深部まで達し、胃や十二指腸に穴があいてしまうこと(穿孔)があります。非常に重篤な状態であり、緊急手術が必要となることもあります。また、ただれが壁のなかの血管を傷つけ、大量出血をきたすこともあります。その場合は緊急で内視鏡を行い、出血を止める処置が必要です。潰瘍を何度も繰り返すと胃や十二指腸が狭くなり、食べ物が通過しにくくなること(狭窄)もあります。そのような事態になる前の早期発見・早期治療が大切です。

|胃潰瘍・十二指腸潰瘍の診断と治療

胃カメラで潰瘍の存在を確認し診断します。治療は胃酸を強力に抑える薬(プロトンポンプインヒビター)が有効です。鎮痛剤が原因となっている場合は休薬も検討します。プロスタグラジンという血流を改善させる薬が鎮痛剤による潰瘍に有効な場合もあります。休薬が難しい場合は、胃潰瘍のできにくい鎮痛剤(COX-2選択的阻害剤)への変更も有効です。

ピロリ菌が原因となっている場合は除菌療法も行います。当院で昨年診断した7人のうち、4人がピロリ菌感染者でした。いずれも除菌療法を行い成功しています。ピロリ菌の除菌を行わなかった場合、胃潰瘍64.5%、十二指腸潰瘍85.3%と高い確率で再発します。潰瘍の治療だけではなく、ピロリ菌の除菌も行うことが非常に重要です。

|胃潰瘍は「胃がん」になるか?

胃潰瘍と胃がんは全く違うものです。よって、胃潰瘍が胃がんになることはありません。しかし、良性の胃潰瘍と悪性の「胃がん」は胃カメラで区別することが難しいケースもあり、組織を採取(生検)して診断したり、慎重に胃カメラで経過観察を行ったりする場合もあります。

|治ったあとに定期的な胃カメラは必要か?

胃潰瘍・十二指腸潰瘍は再発することも多く、「みぞおちの痛み」など再発が疑われる場合は実施したほうがよいと思います。ピロリ菌は潰瘍だけでなく「胃がん」の原因でもあり、除菌により「胃がん」のリスクは低下します。しかしながら、除菌が成功してもやはり健康な人と比べると胃がんのリスクは高く、定期的な胃がん検診は必要です。

国内ではピロリ菌に感染している患者さまは年々減っているため、胃潰瘍・十二指腸潰瘍の患者さまも全国的に減少傾向にあります。しかしながら、「みぞおちの痛み」がある場合は、未だに注意しなければいけない病気です。胃の痛みが続く場合は早めにご相談ください。

《令和6年度 胃カメラ(上部内視鏡検査)の実施状況》

・実施した数

令和6年度 649人
令和5年度 555人
令和4年度 518人

 

・検査の種類

経口内視鏡(口からの胃カメラ) 278人(43%)
経鼻内視鏡(鼻からの胃カメラ) 250人(39%)
鎮静剤を使用した上部内視鏡(眠ってする胃カメラ) 83人(19%)

 

・主な検査の目的

胃の痛み・胸やけなど症状の原因を調べるため 228人(35%)
前回の胃カメラで指摘された病変の経過観察のため 116人(25%)
健康診断(バリウムなど)で異常を指摘されたため 59人(9%)
仙台市胃がん内視鏡検診 163人(25%)

 

・診断した胃の病気で特筆すべきもの

早期胃がん 2人
未治療のピロリ菌による胃炎 40人
治療を必要とする逆流性食道炎 29人
胃・十二指腸潰瘍 7人
胃粘膜下腫瘍 17人
食道胃静脈瘤 2人

腹痛が数日続いたり、痛みを繰り返ような胃痛、また吐き気や吐血・便がいつも違うなど異変を感じた際には、できるだけ早く若林区六丁の目駅前の角田記念まつだクリニック内科・消化器内科までご相談ください。