完全に眠ってしまうって本当?鎮静剤を使った内視鏡
2024.11.15
近年の内視鏡装置の進歩、またそれを用いる我々専門医の手技向上は目覚しいものがあります。しかし、未だ胃カメラや大腸内視鏡は決して「楽な検査」ではありません。そのような中、鎮静剤を使用した内視鏡のニーズは年々高まっています。令和3年度の当院の場合、胃カメラでは9%、大腸内視鏡では27%の患者さまが鎮静剤を使用して内視鏡を受けられています。以前のように患者さまに我慢を強いる時代ではなく、患者さまの価値観を尊重し、希望の多様性に添わなければいけない時代です。鎮静剤を使用した内視鏡という選択肢は世界的な潮流といえます。
|適切な鎮静レベルとは?
鎮静剤を注射するとウトウトと眠ったような状態で内視鏡が受けられます。よく患者さまに「先生!完全に眠ってしまうのですよね?」と聞かれます。答えは「Yes」でもあり「No」でもあります。ガイドラインでは「意識下鎮静」が適切な鎮静レベルとして推奨されています。これは刺激を加えないとウトウトと眠っていますが、声をかけたり、体に触れたりすると目を開けて反応するレベルです。これを聞くと心配になる患者さまが時々いらっしゃいます。しかし、過剰な鎮静は、呼吸が弱くなったり、血圧が低下したり危険を伴います。また、この鎮静レベルでも患者さまの満足度は非常に高いというエビデンスもあります。当院ではミダゾラムという鎮静剤を使用しています。この薬には健忘作用という検査中の嫌なことを忘れてしまう効果があります。このため、実際は検査中の事をあまり覚えていない患者さまがほとんどです。
|鎮静剤使用をご検討の方へ
内視鏡検査というと「苦しい」「辛い」といったイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。鎮静剤を使用することで眠ったような状態で内視鏡が受けられることから、検査時の不安や緊張をやわらげ喉の反射や、お腹の不快感を軽減することができます。またリラックスした状態で実施することでしっかりと観察し丁寧に検査を進めることが可能になります。
当院では呼吸観察をはじめ身体の状態を随時確認しながら検査を実施しておりますが、ご不安なことは事前にご相談ください。
検査当日は、わずかながら鎮静剤の影響が残る可能性があるので車やバイク、自転車の運転はお控えいただくようお願いしております。また検査後には1時間程度、院内でしっかりとお休みください。
|鎮静剤を使用した内視鏡を安全に行うために
鎮静剤を使用した内視鏡は安全に実施されなければいけません。検査前の問診で患者さまから安全に実施するための情報を得ることはとても大切です。内視鏡の鎮静剤には新旧色々なものがあります。その中で、当院で使用するミダゾラムは、効果出現・消失が早いこと、安全治療域の幅が広く余裕があることより使いやすい薬剤です。内視鏡の鎮静剤としての歴史も長く、現在でも広く使用されています。フルマゼニルとうい拮抗薬(鎮静剤が効き過ぎたときにその効果を打ち消す薬)が存在するのも長所で、当院にも常備しています。検査中はベッドサイドモニターで呼吸状態(血中酸素濃度)などを監視しながら行います。当院の検査ベッド(ストレッチャー)には酸素ボンベが搭載されおり、必要時にスムーズに酸素投与が行えます。検査終了後はリカバリールームで1時間程度、状態の観察を行います。
この度、ベッドサイドモニターを最新機種(FUKUDA DENSHI DS-8005F)に更新しました。血圧、心拍数、心電図、血中酸素濃度といった観察する基本的な身体情報は長らく変わりありません。これまで使用していたベッドサイドモニター(COLIN NEXTBP88)は名機で不調もなくまだまだ使用可能なのですが、購入後10年以上が経過し更新することとしました。長期にわたり当院で内視鏡を受ける患者さまを見守ってくれた功績に感謝します。新しいベッドサイドモニターは基本的な機能はこれまでのものと変わりありません。携帯性が向上しており、移動時やリカバリールームでの使用がこれまでより容易になると期待しています。
角田記念まつだクリニック内科・消化器内科では、今後も引き続き「苦しくない」「安全で」「正確な」内視鏡をめざします。
院長
青森県三沢市出身
函館ラ・サール高校卒
近畿大学医学部卒
医学博士
日本内科学会認定 総合内科専門医
日本消化器病学会認定 消化器病専門医
日本内視鏡学会認定 内視鏡専門医
日本肝臓学会認定 肝臓専門医
日本医師会認定 産業医
日本肝癌研究会 会員
日本超音波学会 会員
難病指定医 消化器科
身体障害者福祉法第15条第1項による指定医(障害区分:肝臓の機能障害)