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胃がんの早期発見・早期治療のため胃内視鏡(胃カメラ)検診を受けましょう!
2021.07.25

胃がんの早期発見・早期治療のため胃内視鏡(胃カメラ)検診を受けましょう!

 これまで胃がん検診においては長い間、胃エックス線検査が推奨され行われてきました。一度でも受けたことのある方はお分かりだと思いますが、バリウムという白い液体を飲んだのちに、検査台の上でゴロゴロと体位を変え、レントゲン写真を撮っていく検査です。胃癌による死亡率を減少させるというしっかりとした科学的根拠もあるのすが、バリウムを飲んだあとお腹が痛くなる、検診を受ける日・場所などが限定される、要精査になる(検診でひっかかる)と再び胃カメラを飲まなければいけないなど、不満の声の多い検診の一つです。

 このようななか、胃カメラによる胃がん検診の導入を望む声はかなり以前よりありました。しかし、当時は科学的根拠が少ないことから長らく先送りとなっていました。ところが近年、国内外の研究から胃内視鏡検診が胃癌の死亡率を下げるという根拠が徐々に示されるようになり、平成27年に厚生労働省「がん検診のあり方に関する検討会」より胃がん検診の検査項目は「胃エックス線もしくは胃内視鏡とする」との提言がなされました。これを受け全国の市民検診で胃内視鏡検診が徐々に導入され、仙台市でも平成31年度より開始されることとなりました。

 胃カメラによる胃がん検診は、お近くの登録医療機関(診療所・病院)で受けることができますので利便性は向上すると思います。異常が発見された場合はその場で病変を採取し、精密診断をすることもできます。胃エックス線検査よりも胃癌による死亡率を下げる可能性があるのではないかというデータも出揃いつつあります。

 胃カメラは一般的に偶発症(被検者の望んでいない事象)の極めて少ない安全な検査なのですが、残念ながら決して楽な検査ではありません。市民検診では比較的苦痛が少ないと言われている経鼻内視鏡は選択可能です。しかし、当院を含む多くの病院・診療所などで行われている鎮静剤・麻酔薬を使用しての胃内視鏡(いわゆる眠ってする内視鏡)は市民検診ではできません。何故ならこれらの薬剤を使用した胃内視鏡は、万全の対策を講じて実施しても明らかに偶発症の頻度が上昇するということが学会等の全国調査で知られており、「安全な検査方法でがんを早期発見する」という市民検診の基本理念に反するものであるからです。但し、「少々のリスクはあっても苦痛なく検査を受けたい」という、個人の判断も尊重されるべきであると思います。このような方々には、市民検診ではなく個人検診での鎮静剤・麻酔薬を使用した胃内視鏡をお勧めします。

 胃エックス線検査と胃内視鏡検査はそれぞれ良い点、悪い点ともにあり、現時点では優劣を判断し難いのですが、胃がん検診の選択肢が増えたことは素晴らしいことだと思います。胃内視鏡検診のスタートを契機に胃がん検診の受診率が向上し、胃がんの早期発見・早期治療につながることを期待したいと思います。